モンステラマニアも20年目。20周年ということでいろいろやりたかったことがあるのだが、このコロナ騒ぎで今のところ全て白紙。(いや、実はあまり準備していなかったのでたいした影響はないのだが…)
 先日バルベルギアを買いに行った花屋さんと観葉植物談義をして、モンステラマニアというWEBサイトをやっていますと自己紹介してきた。「俺のビカクシダ」というWEBサイトと同じくらい前からやってるんですという話になって、花屋さんは「俺のビカクシダ」は知っているけど、「モンステラマニア」は知らなかったという。最近は知名度も下がっているなと反省…。

 そもそもモンステラマニアは観葉植物、インテリアプランツの啓蒙活動としてスタートした。啓蒙活動してるのに、知名度が下がっては何の意味もない…

 モンステラマニアをスタートさせた2000年頃、植物といえば80〜90年代から続くガーデニングの大ブーム。ホームセンターなどでは、ガーデニング用の草花や植木が主役。観葉植物はちょっと肩身が狭く置かれていた。種類的には80年代のベンジャミン大ブームに代わってパキラやクワズイモがはやっていた。ハイドロカルチャーなんかも流行っていたかな。

 一方でインテリア業界は、80年代に芽が出始めていたライフスタイル型インテリアショップが、90年代に入ってどんどん増え、イデーやコンランショップ、インザルーム、フランフランなど人気を博していた。90年代中頃からはミッドセンチュリーデザインのリバイバルブームが始まり、インテリアショップも爆発的に増え、インテリアイベントがあちこちで開かれた。インテリアとファッションと音楽が非常に強くシンクロしていた時代だ。僕も当時すっかりそのブームに浸かっており、古いインテリは本を読みあさっては、あちこちに増えていた中古家具屋巡りをしていた。そこであることに気づいた。50年代、60年代、70年代、それぞれの年代のインテリアや建築空間の変遷にあわせて、観葉植物の種類や飾り方にもブームがあるということ。50年代はマルコザヌーソの椅子のような四つ足でファブリックな家具にゴムノキなど。60年代はちょっとモダンになり、一本足のイームズラウンジチェアなど色気が出てきたデザインにモンステラを。そして70年代になると白いプラスチックの家具やカラフルなインテリアが増え、ヤシ系の植物に人気が集まる。ブームの変遷はその後も続き、80年代はポストモダンな家具に一世を風靡したねじり幹のベンジャミン。90年代はフィリップスタルクのような新世代デザイナーによる家具とクワズイモやパキラの大流行。なるほど、確実にインテリアとともに観葉植物にも流行の変遷があることがわかった。ところが、ミッドセンチュリーインテリアに再スポットが当たっても、当初その部屋の写真にはあまり観賞植物が置かれていなかったり、置かれていても普通に流行っているクワズイモやパキラ、生き残りのベンジャミンなどが置いてあったりして、違和感を感じるようになってしまった。椅子やテーブルのデザイナーや年代にはこだわってコーディネートしてるのに、観葉植物にこだわらないのはおかしい。そこではじめたのがモンステラマニアだった。

インテリアと観葉植物の流行の変遷

椅子やテーブルにこだわるように、観葉植物や植木鉢までトータルにこだわってコーディネートしたらもっと空間全体がかっこよくなる。そのとき一番目についた植物がモンステラだった。古い写真を見ていても、モンステラの個性は際立っていた。モダンデザインがより自由になって花開いたのがミッドセンチュリー期。家具のデザインは様々な美しい曲線が多用された。個性的なデザインがあふれるなかで、あのモンステラの何ともいえない曲線は、ぴったり時代にマッチしたのかもしれない。カメラマンも明らかにそれを意識したように、写真の角にいい感じにモンステラの葉を残す構図があちこちに見受けられる。そしてモンステラこそがキングオブモダンリビングプランツだと確信したのだ。ミッドセンチュリーモダン建築で欠かすことができないケーススタディーハウスの#8「イームズハウス」にはまさにキングと言わんばかりに巨大なモンステラが飾られている。

 1999年、僕は9年間勤めていた会社を辞めた。企業のプロダクトデザイン的なものをやっていたのだが、イラストレーターとしてフリーランスになる決意をした。当時流行っていたファッションイラストレーターに対抗して、インテリアイラストレーターと名乗ることにした。インテリアを描きながら、そこでモンステラの魅力や観葉植物の魅力も一緒に伝えちゃおうと思った。

 そしてモンステラマニアがスタートした。

 幸い共感してくれた方々がたくさん現れ、ファッション誌の「流行通信」とインテリア誌の「be Sure 」からデビュー。目黒通りのモダニカからはモンステラポスターが大ヒット。千駄ヶ谷のプールアニックからはモンステララグがエルデコ大賞へ。雑誌、新聞、ラジオ、テレビの取材もたくさんうけた。BBS、ブログ、SNSとインターネットの進化もこの啓蒙活動の武器になった。インテリアショップが一堂に会するイベントでソファーデザインコンペの募集ポスターのイラストも描いた。もちろんモンステラも描かれている。
モンステラ、モンステラとさわいで、いつ飽きるかと思ってるうちに20年たってしまった。

※目黒通りにあった人気インテリアショップ「モダニカ」でのイベント。2005年”MIST”
DJコモエスタ八重樫(写真中央:DJする八重樫氏)さんがモダニカの名前を冠して発売したラウンジアルバム「BGM fo MODERNICA」。そのジャケットイラストを僕が担当。そのポスターと、大ヒットポスター「ウォールプランツシリーズ」(右柱)を壁に飾り、目黒通りのインテリアショップが一斉に開催するインテリア祭り。音楽、インテリア、ファッション、いろいろリンクしていた時代だ。

 

CDジャケット
目黒通りから見た店内
千駄ヶ谷にあったプールアニック。今はよくありそうなデザインだが、当時はモンステラをこのように配置するデザインは珍しかった?第1回エルデコ大賞ラグ部門日本代表。

 まだまだ続きますよ。モンステラマニア。今年はできないかもしれないけど、20周年イベントをなんだかの形で、実現したい。

 モンステラマニアがでどれほど貢献できたかはわからないが、2000年以降、観葉植物はブームだ。2003年くらいから急激に観葉植物関係の市場規模が伸びてるデータもある。

出典:(株)フラワーオークションジャパン
2010年 FAJ鉢物レポート6月 より
大田市場のフラワーオークションジャパンの「モンステラ取り扱い実績」資料

 しかしここ数年、インテリアコーディネートとしての観賞植物から、珍しいもののコレクションへと一般の興味が移ってきている。観葉植物の世界はよりマニアックに、自分の好きなジャンルを見つけて、それをコレクションしていくような楽しみ方が増えている。斑入り、多肉、サボテン、ビカクシダ、塊根植物、エアプランツ、そしてタンクブロメリア。インテリアと言うより、栽培農家やフィギュアコレクションのように並べる。これは前々回の「モンステラマニア日記」につながる話しなので、これについては前回のブログも参照して欲しい。

 モンステラマニアはこれからも、あくまでもインテリアとしての観葉植物を考えるWEBサイトとして独自の立ち位置を維持していきたいと思う。いや、もっとより空間的なこと、ライフスタイル的な情報をふやしていこうか。そしてイラストレーター、アーティストとして作品をつくっていきたい。そんなモンステラマニアに、これからもどうぞおつきあい願えればと思う。

何卒よろしくお願いいたします。

8月5日(水) 梅雨が明けたと思ったら暑い夏…